親知らずの手術とは?抜歯との違い・流れ・痛み・費用までわかりやすく解説
親知らずの抜歯を「手術」と説明され、不安を感じていませんか。
切開や骨の削除を伴う親知らずの手術は、通常の抜歯とは処置の方法が異なります。
そのため、痛みやリスク、費用が気になる方も多いはずです。
本記事では、親知らずの手術と抜歯の違いから、手術が必要になるケース、当日の流れ、麻酔、費用、術後の過ごし方までを整理して解説します。
手術を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

親知らずの「手術」とは?抜歯との違いを解説

親知らずの「手術」とは、歯ぐきの切開や骨の削除、歯の分割を伴う外科的な抜歯を指します。
歯ぐきから見えている歯をそのまま抜く通常の抜歯とは、処置の手順が大きく異なります。
まずは両者の違いと、手術になりやすい親知らずの特徴を解説しましょう。
通常の抜歯と外科的な抜歯(手術)の違い
まっすぐ生えて頭が見えている親知らずは、器具で挟んで抜く比較的シンプルな処置で対応できます。
一方、歯ぐきや骨に埋まった親知らずは、そのままでは取り出せません。
歯ぐきを切開し、覆っている骨を一部削り、歯を分割して取り出します。
この外科的な処置を、親知らずの「手術」と言います。
手術になりやすい親知らずの生え方
手術になりやすいのは、まっすぐ生えていない親知らずです。
手前の歯に向かって斜めに傾いた歯や、真横に倒れた歯、歯ぐきや骨の中に深く埋まった歯などが該当します。
これらは通常の方法では抜歯が難しいため、切開や分割を伴う外科的な処置が求められます。
「埋伏智歯」「難抜歯」という言葉の意味
歯科では、歯ぐきや骨に埋まった親知らずを「埋伏智歯(まいふくちし)」と呼びます。
とくに真横に倒れて埋まった状態は「水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)」です。
抜歯の難易度が高いものは「難抜歯(なんばっし)」に分類され、これらの用語は手術の説明でしばしば用いられます。
親知らずの手術が必要になるのはどんなケース?

手術がすすめられるのは、親知らずが正常に生えず、周囲にトラブルを起こしている、または起こす可能性が高い場合です。
埋まり方や神経との位置関係、症状の有無によって判断されます。
代表的なケースを見ていきましょう。
横向き・水平に埋まっている場合
親知らずが手前の歯を押すように横向きや水平に埋まっているケースは、手術の対象となりやすい状態です。
放置すると手前の歯を虫歯にしたり、歯並びに影響を及ぼしたりすることがあります。
取り出すには切開と分割が欠かせないため、外科的な処置が選択されます。
骨や歯ぐきに深く埋まっている場合
歯の大部分が骨や歯ぐきに埋もれている場合も、手術が必要になります。
頭がわずかしか出ていない、あるいはまったく見えない親知らずは、器具で直接つかめません。
そのため、歯ぐきを開いて骨を削り、歯を露出させたうえで取り出す手順を踏みます。
トラブルを繰り返している・神経に近い場合
痛みや腫れ、智歯周囲炎(ちししゅういえん)を繰り返す親知らずは、原因を取り除くために抜歯がすすめられます。
袋状の病変である嚢胞(のうほう)が確認された場合も対象です。
神経や血管に近い位置にあるケースでは、より慎重な手術が求められます。
親知らずの手術前に行う検査と準備

安全な手術のためには、事前の検査と準備が欠かせません。
親知らずの向きや神経との位置関係を正確に把握し、全身の状態を確認したうえで臨みます。
ここでは、手術前に行う主な内容を説明します。
レントゲン・CTによる精密検査
まずレントゲン撮影を行い、親知らずの向きや根の状態、神経や血管の位置を確認します。
埋まり方が入り組んでいるケースや神経が近接しているケースでは、三次元で状態を捉えられるCT撮影をあわせて行うこともあります。
こうした事前の精密な診断が、安全な手術の土台です。
全身の健康状態・服用中の薬の確認
手術前には、持病の有無や服用中の薬についても確認します。
高血圧や糖尿病などの持病がある方、血液をサラサラにする薬を服用している方は、状態に応じた配慮が必要になる場合があります。
問診の際は、こうした情報を正確に申告することが大切です。
手術前日・当日に気をつけたいこと
手術を安全に受けるには、体調を整えて臨むことが重要です。
前日は十分な睡眠をとり、当日の食事については、担当の歯科医師または医療機関の指示に従ってください。
発熱や体調不良があるときは、無理をせず担当の歯科医院に相談してください。
親知らずの手術の流れと所要時間

親知らずの手術は、麻酔から始まり、切開、分割、抜去、縫合という手順で進みます。まっすぐ生えた歯の抜歯とは工程が異なるため、あらかじめ流れを知っておくと落ち着いて臨めます。一般的な進め方を確認しましょう。
①麻酔・②歯ぐきの切開
まず局所麻酔を行い、処置する部位の感覚を十分に麻痺させます。
麻酔が十分に効いていることを確認したうえで、埋まった親知らずを取り出すために歯ぐきを切開します。
歯を覆っている骨があるときは、必要な範囲を一部削り、歯を露出させていきます。
③歯の分割・抜去
横向きや埋伏した親知らずは、そのままでは取り出せないことがほとんどです。
そのため、歯を数回に分割し、小さくしてから少しずつ取り出します。
歯を分割して取り出すことで、周囲の骨や歯ぐきへの負担を抑えながら処置を進められます。
④洗浄・縫合と所要時間の目安
歯を取り出した後は傷口をきれいに洗い流したうえで、状態に応じて縫合を行います。
用いた糸は、数日後の再来院時に抜糸する流れです。
手術にかかる時間は難易度によって幅があり、骨の削除や分割を多く要する場合は30分以上に及ぶこともあります。
麻酔が効いているため、処置中に強い痛みを感じることはほとんどありません。
親知らずの手術で使う麻酔の種類

親知らずの手術では、痛みを抑えるために麻酔を用います。
多くは局所麻酔で対応できますが、状態や希望に応じて別の方法が選ばれることもあります。
それぞれの特徴を理解しておきましょう。
局所麻酔
親知らずの手術の多くは、局所麻酔で行われます。
処置する部分にだけ作用させる方法で、意識を保ったまま受けられ、日帰りで対応できるのが特徴です。
麻酔が効いている間は痛みをほとんど感じません。
効果が切れた後の痛みには、処方された鎮痛剤で対応します。
静脈内鎮静法
恐怖心が強い方や、複数本をまとめて抜くケースでは、静脈内鎮静法が選択肢になることがあります。
点滴を通じて鎮静剤を投与し、リラックスした状態で処置を受ける方法です。
うとうとした状態で処置を受けられるため、不安や緊張をやわらげられます。
全身麻酔・入院が必要になるケース
埋まり方が非常に深い場合や、全身の管理が必要な場合には、全身麻酔で手術を行うことがあります。
この場合は設備の整った医療機関で受けることになり、入院を伴うケースも。どの麻酔が適しているかは、親知らずの状態や全身状態をもとに判断されます。
親知らずの手術で知っておきたいリスク

親知らずの手術には、いくつかのリスクや合併症が伴います。
多くは一時的なもので回復しますが、事前に理解しておくことで、術後の変化にも落ち着いて対応できます。
代表的なものを確認しましょう。
痛み・腫れ・内出血
手術後は、痛みや腫れが生じるのが一般的です。
切開や骨の削除を伴う手術では、まっすぐな抜歯に比べて腫れが出やすくなります。
頬に内出血が現れると、あざのように見えることもあり、多くは時間の経過とともに改善しますが、程度には個人差があります。
ドライソケット
ドライソケットとは、傷口にできるはずの血の塊(血餅)が十分に形成されず、骨が露出してしまう状態です。
数日を過ぎても強い痛みが引かない点が特徴で、下の親知らずで生じやすい傾向が指摘されています。
異変を感じた場合は、手術を受けた歯科医院に相談してください。
神経のしびれ・上顎洞への影響
下顎の親知らずが神経に近い場合、術後に唇や舌のしびれが現れることがあります。
多くは時間の経過とともに回復しますが、まれに長引くケースもみられます。
上顎の親知らずでは、鼻の奥にある上顎洞(じょうがくどう)と交通が生じる場合があり、状態に応じた処置が必要です。
関連記事:親知らずの抜歯は上と下どっちが痛い?痛みや腫れの違い、抜歯後の過ごし方
親知らずの手術後の経過と過ごし方

手術後は、傷の回復を妨げないための過ごし方が重要です。
痛みや腫れの経過を把握し、注意点を守ることで、傷口の治癒を促すことにつながります。
術後の一般的な流れと過ごし方を説明します。
痛み・腫れのピークと落ち着くまでの目安
痛みや腫れは、手術を終えた翌日以降、数日のうちにもっとも強まるのが一般的です。
その後は徐々に和らぎ、多くは1週間ほどで落ち着いていきます。
ただし、回復のペースには個人差があり、痛みが想定より強いときは我慢せず歯科医院に相談してください。
抜糸までの通院スケジュール
縫合を行った場合は、手術からおよそ1週間後に抜糸のための通院が必要です。
経過に問題がなければ、抜糸をもって一連の処置は完了します。
痛みや腫れが強い場合や、発熱を伴う場合には、追加の通院で対応することもあります。
術後にやってはいけないこと
傷口には、治癒を促す血餅(けっぺい)が形成されます。
これが剥がれると治りが遅れるため、強いうがいや、傷口を舌や指で触れる行為は避けましょう。
また、手術当日の飲酒、喫煙、激しい運動、長時間の入浴は、出血や腫れを強める原因になるため控えることが望まれます。
関連記事:親知らずの抜歯後はどう過ごす?痛みや腫れ、食事の目安を解説
親知らずの手術にかかる費用

親知らずの手術には、健康保険が適用されます。
自由診療ではないため、費用の負担は比較的抑えられます。
ここでは、おおよその費用感と、負担を軽減できる制度について説明します。
保険適用での費用相場
親知らずの抜歯は保険診療の対象で、3割負担で受けられます。
横向きや埋伏した親知らずは「難抜歯」とされることが多く、費用はまっすぐな歯の抜歯と比べて高額になりがちです。
抜歯にかかる費用は数千円程度が目安で、これに薬代が加わります。
検査(レントゲン・CT)にかかる費用
手術の前に行うレントゲンやCTの検査費用も、保険適用の対象です。
CT検査はレントゲンと比べて高額になりますが、神経との正確な位置関係を確認するために必要となる場合があります。
具体的な金額は、検査内容や医療機関によって異なります。
医療費控除の対象になる場合も
親知らずの手術にかかった費用は、医療費控除の対象に含められます。
1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告を行うことで所得税などの負担が軽減される制度です。
生計を同じくする家族の分も合算できるため、領収書は保管しておくと安心です。
親知らずの手術に関するよくある質問

最後に、親知らずの手術について多く寄せられる質問にお答えします。
事前の疑問を解消し、安心して手術に臨むための参考にしてください。
手術中は痛みを感じますか?
手術は局所麻酔を行ったうえで進めるため、処置中に強い痛みを感じることはほとんどありません。
麻酔が切れた後に痛みが出た場合は、処方された鎮痛剤で対応できます。
痛みへの不安が強い方は、事前に担当の歯科医師へ相談しておくと安心です。
日帰りで受けられますか?入院は必要ですか?
多くの親知らずの手術は、局所麻酔による日帰りで受けられます。
ただし、埋まり方が深い場合や全身の管理が必要な場合は、全身麻酔や入院を伴う医療機関で対応が欠かせません。
どちらが適しているかは、検査結果をもとに判断されます。
大学病院を紹介されるのはどんなときですか?
親知らずが神経や血管に近接している場合や、全身疾患があり慎重な管理を要する場合は、より専門的な設備が整った大学病院などを紹介されることがあります。
これは安全に処置を進めるための判断であり、紹介状をもとにスムーズな受診が可能です。
茂木院長の総評|親知らずの手術は事前の理解と準備で安心して臨める
親知らずの手術は、切開や骨の削除、歯の分割を伴う外科的な抜歯であり、通常の抜歯とは進め方が異なります。
横向きや埋伏した親知らずが対象となりやすく、事前の検査と準備が安全な処置の土台です。
だからこそ、口腔外科の経験を備えた歯科医院で状態を正確に診断してもらうことが欠かせません。
歯科ハミール高田88は、高田馬場駅から徒歩1分、土日も診療している歯科医院です。当院ではCT検査で親知らずの状態を立体的に確認し、本当に抜歯が必要かを慎重に見極めます。
親知らずの痛みや腫れ、手術への不安がある方は、まずはお気軽にご相談ください。

この記事を監修した医師
赤崎 公星(あかさき こうせい)
歯科ハミール 理事長・歯科医師|愛知学院大学歯学部卒|厚生労働省認定臨床研修指導医