親知らずの抜歯で保険はおりる?健康保険と民間保険の違い・給付条件を解説
「親知らずを抜歯する予定だけれど、保険金は受け取れるのだろうか」と疑問に思う方は少なくありません。
結論から言うと、治療目的の親知らず抜歯には公的医療保険が適用されるのが一般的です。
一方、民間の生命保険や医療保険では、契約内容を確認する必要があります。
本記事では、親知らず抜歯における公的医療保険の適用範囲と、民間保険の給付対象を確認する方法、請求手続きや必要書類について解説します。

親知らずの抜歯で保険はおりる?

親知らずの抜歯に対して、民間の生命保険や医療保険から給付金が支払われるかどうかは、契約している商品の約款によって異なります。
抜歯の難易度にかかわらず対象外となる商品もあるため、処置内容だけで判断することはできません。
まずは、健康保険と民間の生命保険・医療保険の違いを整理したうえで、給付金が受け取れるケースと受け取れないケースの基本的な考え方を確認しておきましょう。
健康保険と生命保険・医療保険は別もの
| 項目 | 公的医療保険 | 民間の生命保険・医療保険 |
|---|---|---|
| 目的 | 治療費の自己負担を軽減 | 条件を満たした場合に給付金を支給 |
| 加入 | 国民皆保険制度 | 任意加入 |
| 対象 | 治療目的の親知らず抜歯 | 契約内容によって異なる |
| 支払われるもの | 医療費の一部を保険負担 | 手術給付金・入院給付金など(契約による) |
| 確認方法 | 医療機関 | 保険会社・約款 |
炎症や虫歯などの治療を目的とした親知らずの抜歯には、健康保険が適用されることが一般的です。
患者は、年齢や所得などに応じた自己負担割合分を医療機関の窓口で支払います。
一方、民間の生命保険や医療保険に設けられた手術給付金は、契約上の支払条件を満たした場合に保険会社から支払われます。
公的医療保険とは目的や仕組みが異なるため、混同しないよう、まずこの違いを正しく理解しておきましょう。
親知らずの抜歯で給付金が受け取れるケース
給付対象かどうかは、契約している保険の約款や対象手術一覧を確認したうえで、保険会社へ問い合わせる必要があります。
民間の医療保険や生命保険では、手術給付金の保障が付いていても、抜歯手術が支払対象から除外されている場合があります。
一方、契約内容や入院の有無によっては、別の給付金を請求できる可能性もあるため、保険会社への確認が必要です。
すべての親知らず抜歯が対象になるわけではない
まっすぐに生えた親知らずの通常抜歯も、診療報酬上は「抜歯手術」に分類されますが、すべての親知らず抜歯が給付金の対象になるとは限りません。
給付の可否は、主に加入している保険商品の約款や支払基準によって決まります。
ただし、民間保険では抜歯手術そのものが給付対象外となる場合があり、処置の難易度だけで給付の可否を判断することはできません。
抜歯前に、予定されている処置名を歯科医院へ確認し、保険会社へ問い合わせておきましょう。
民間保険の給付対象を確認したい親知らず抜歯のケース

親知らずの抜歯では、処置の難易度だけで民間保険の給付可否は決まりません。
ここでは、手術給付金や入院給付金について、保険会社への確認が必要となる代表的なケースを紹介します。
埋伏歯(埋まっている親知らず)の抜歯
歯ぐきや骨の中に埋まっている親知らずは「埋伏歯」と呼ばれます。
歯の位置や埋まり方によっては、歯ぐきの切開や骨の削除、歯の分割などが必要です。
埋伏歯の抜歯は、通常の抜歯とは異なる区分で診療報酬が算定される場合があります。
契約している保険商品ごとに対象手術の範囲が異なるため、事前に確認しておくことが望まれます。
横向き・斜めに生えた親知らずの抜歯
横向きや斜めに生えた親知らずでは、歯の位置や埋まり方によって、通常より複雑な抜歯処置が必要になることがあります。
歯を分割したり、周囲の骨を削ったりする場合は、難抜歯や埋伏歯抜歯として算定されることがあります。
ただし、処置が複雑であっても、民間保険の手術給付金が支払われるとは限りません。
給付の可否は、提出書類に記載された処置内容と、契約している保険の約款・支払基準をもとに保険会社が判断します。
歯肉切開や骨を削る外科的抜歯
親知らずの向きにかかわらず、歯ぐきの切開や骨の削除を伴う抜歯は、通常の抜歯とは異なる診療報酬区分で算定される場合があります。
一方で、民間保険の給付対象になるかどうかは、契約内容によって異なるため、確認が必要です。
給付金の可否は、処置内容に加えて、保険商品の約款や給付対象手術の定義、除外規定などをもとに判断されます。
入院を伴う親知らず抜歯
複数本を同時に抜歯する場合や全身麻酔を用いる場合には、入院が必要になることがあります。
契約上の入院条件を満たせば、入院給付金の対象となる可能性があります。
入院給付金の対象となる場合でも、抜歯に対する手術給付金が支払われるとは限りません。
それぞれの支払条件を個別に確認する必要があります。
入院が必要な場合は、事前に保険会社へ給付の見込みを確認しておくとよいでしょう。
保険金がおりない可能性があるケース

外科的な処置を伴わない抜歯や、契約内容によっては給付金が受け取れない場合もあります。
想定しておくべき代表的な3つのケースは以下の通りです。
- まっすぐ生えた親知らずの通常抜歯
- 契約内容で手術給付の対象外となる場合
- 免責期間や告知義務違反に該当する場合
順番に解説します。
まっすぐ生えた親知らずの通常抜歯
まっすぐに生えている親知らずを、切開や骨の削除を行わずに抜く場合も、診療報酬上は抜歯手術に分類されます。
ただし、民間保険では、抜歯手術が給付対象から除外されている場合があります。
治療目的の処置であれば、原則として公的医療保険の対象です。
抜歯前に処置内容の見込みを歯科医に確認し、給付対象になるかどうかをあわせて確認しておくと良いでしょう。
契約内容で手術給付の対象外となる場合
保険商品によっては、抜歯手術や一部の歯科手術は手術給付金の対象外とされています。
同じ処置内容であっても、加入している保険の種類や契約時期によって扱いが異なる点には注意が必要です。
給付の可否を確認するには、約款や対象手術一覧を確認したうえで、保険会社へ直接問い合わせましょう。
免責期間や告知義務違反に該当する場合
契約上の保障開始前に受けた治療や、告知義務違反に該当する場合などは、給付金が支払われない可能性があります。
契約時の告知事項に該当する診察・検査・治療歴などを正しく申告しなかった場合は、告知義務違反と判断される可能性があります。
告知内容や給付条件が不明な場合は、保険会社へ確認しましょう。
親知らず抜歯で保険金を申請する流れ

給付金の申請は、手順を順番に進めることでスムーズに完了します。
一般的な申請の流れは、以下の4つのステップです。
- 加入している保険会社へ連絡する
- 必要書類を準備する
- 診断書が必要か確認する
- 給付金の審査・支払い
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 手術給付金 | 抜歯が対象手術か |
| 入院給付金 | 入院した場合に支払対象か |
| 必要書類 | 診断書・診療明細書など |
| 請求期限 | いつまで申請できるか |
| 診断書 | 指定様式があるか |
①加入している保険会社へ連絡する
予定または実施された抜歯が給付対象となるかどうかを、保険会社に確認します。
連絡の際は、抜歯日または予定日、処置名、入院の有無、受診した歯科医院名などを伝えます。
複数の保険に加入している場合は、それぞれの保険会社へ個別に連絡します。
②必要書類を準備する
保険会社から案内された請求書類を準備します。
一般的には、給付金請求書や診療明細書、領収書などを準備します。
契約内容や請求方法によっては、診断書の提出が必要です。提出前に記入漏れや添付書類の不足がないかを確認しましょう。
③診断書が必要か確認する
給付金の請求にあたり、診断書の提出が必要かどうかは保険会社や契約内容によって異なります。
診療明細書のみで手続きが完了する場合もあれば、処置内容を証明するために診断書の提出を求められる場合もあります。
診断書が必要な場合は、抜歯を受けた歯科医院に作成を依頼し、発行までの期間もあわせて確認しておくとよいでしょう。
④給付金の審査・支払い
必要書類がすべてそろうと、保険会社にて審査が行われます。
審査では、処置内容が契約上の給付対象に該当するかどうかが確認されます。
給付対象と認められた場合は、指定口座へ給付金が振り込まれます。
審査にかかる期間は保険会社によって異なるため、目安の日数についても事前に確認しておきましょう。
保険金請求で必要になる書類

給付金の申請には、複数の書類をそろえる必要があります。
代表的な書類は、以下の通りです。
- 診療明細書・領収書
- 診療情報提供書・診断書
- 保険会社指定の請求書
どのような書類なのか、順番に解説します。
診療明細書・領収書
抜歯を受けた歯科医院で発行される診療明細書や領収書は、給付金請求時に提出を求められる場合があります。
処置日や処置内容、支払った費用が記載されており、保険会社が給付対象かどうかを判断する際の重要な資料になります。
再発行の可否や手続きは歯科医院によって異なるため、紛失した場合は受診先へ確認してください。
診療情報提供書・診断書
保険会社から処置内容の証明を求められた場合は、所定の診断書などを提出します。
診断書には、傷病名や処置名、治療日や入院期間など、保険会社が指定する事項が記載されます。
作成には歯科医院での手続きと発行費用が必要になる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
保険会社指定の請求書
多くの保険会社では、独自の様式による請求書の提出を求めています。
契約者情報や処置内容、振込先口座などを記入する書類であり、記入漏れがあると審査が滞る原因になります。
請求書は保険会社のウェブサイトから取り寄せられる場合が多いため、早めに準備しておくとよいでしょう。
親知らず抜歯の費用相場と健康保険の適用

親知らずの抜歯には健康保険が適用されるため、自己負担額はある程度の目安を把握しておくことができます。
費用の内訳と、自由診療とされるケースについて確認しておきましょう。
保険診療の費用相場
治療として行う抜歯には、原則として公的医療保険が適用されます。
自己負担割合は年齢や所得などによって異なりますが、多くの現役世代では3割です。
まっすぐに生えた親知らずの抜歯と比べ、歯茎に埋もれているなど難易度が高い場合は費用が高くなります。
抜歯そのものの自己負担額は、3割負担で数千円程度が一つの目安です。
CT撮影・薬代など追加費用
抜歯前には、レントゲン撮影に加えてCT検査が行われる場合があります。
下顎の親知らずと神経の位置関係などを立体的に確認する必要がある場合は、歯科用CTを撮影することがあります。
医師が診療上必要と判断し、保険診療の要件を満たす場合は、公的医療保険の対象です。
検査内容や自己負担割合によって費用が異なるため、受診する歯科医院へ確認しましょう。
また、鎮痛剤や抗生物質などの薬が処方される場合は、別途費用がかかります。
自由診療とされるケース
抜歯は基本的に保険診療の対象ですが、治療上の必要性が認められない抜歯や、公的医療保険の適用要件を満たさない処置は、自由診療となる場合があります。
自由診療は費用が全額自己負担となるため、事前に歯科医院から説明を受け、費用の内訳を確認しておくことが重要です。
親知らず抜歯の保険に関するよくある質問

親知らずの抜歯と保険給付金については、細かい疑問を持つ方も少なくありません。
ここでは、よく寄せられる5つの質問にお答えします。
親知らず4本同時抜歯でも保険金はおりる?
4本同時に抜歯する場合でも、給付の可否は本数ではなく処置内容によって判断されます。
複数本の抜歯に伴って入院した場合は、契約条件を満たせば入院給付金の対象となる可能性があります。
ただし、抜歯手術が手術給付金の対象外となる商品もあるため、両方が支払われるとは限りません。
契約内容によって扱いが異なるため、事前に保険会社へ確認しておくとよいでしょう。
通院だけでも給付金は受け取れる?
手術給付金の対象となるかどうかは、保険商品の約款によって異なります。
外科的な処置を伴っていても、抜歯手術が支払対象から除外されている場合があります。
手術給付金の支払条件は、処置内容や契約上の規定によって決まります。
通院給付金が付いている場合は、通院日数などが別途給付条件となることもあります。
共済でも親知らず抜歯は対象になりますか?
給付対象になるかどうかは、加入している制度や保障内容によって異なります。
外科的な抜歯であることだけでは判断できません。
対象手術の範囲や給付金額は共済ごとに定められているため、加入している共済の窓口や約款で確認することをおすすめします。
診断書には費用がかかりますか?
診断書の発行を依頼する場合は、原則として文書料がかかります。
金額は医療機関によって異なるため、依頼する際にあわせて確認しておきましょう。
なお、診断書の文書料が給付されるかどうかは契約内容によりますが、通常は請求者の自己負担です。
何年前の抜歯でも請求できますか?
保険金の請求には時効が定められており、一般的には請求権が発生してから一定期間を過ぎると請求できなくなります。
具体的な期間は保険会社や契約内容によって異なるため、過去の抜歯について請求を検討している場合は、早めに保険会社へ確認することをおすすめします。
茂木院長の総評|親知らずの抜歯は契約内容を確認して保険金を活用しよう
親知らずの抜歯が民間保険の給付対象になるかどうかは、加入している商品の約款や支払基準によって異なります。
埋伏歯や横向きの親知らずで外科的な処置を伴う場合でも、抜歯手術が給付対象から除外されていることがあるため、処置の難易度だけでは判断できません。
抜歯前に予定されている処置名を歯科医院へ確認し、その名称を保険会社へ伝えて給付の可否を問い合わせましょう。
申請の際は、診療明細書や診断書などの必要書類を漏れなく準備し、スムーズな給付につなげましょう。

この記事を監修した医師
赤崎 公星(あかさき こうせい)
歯科ハミール 理事長・歯科医師|愛知学院大学歯学部卒|厚生労働省認定臨床研修指導医