親知らずが横向きに生えると抜歯が必要?放置するリスクと抜歯の判断基準を解説
横向きに生えてきた親知らず。「このまま放置して大丈夫なのか」「抜いたほうがよいのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
横向きの親知らずは、隣の歯を押したり、虫歯や歯周病、歯茎の炎症の原因になったりと、さまざまなトラブルを招くことがあります。
本記事では、親知らずが横向きに生える原因などを、わかりやすく解説します。
抜歯を迷っている方は、歯科医院で相談する際の参考にしてください。

親知らずが横向きに生えるのはなぜ?

親知らずがまっすぐではなく、横向きに生えてしまうのには理由があります。
まずは、その背景にある原因を確認しておきましょう。
顎のスペース不足が原因の一つ
親知らずは、上下の歯列のもっとも奥に生える永久歯で、多くの場合、10代後半から20代前半にかけて生え始めます。
しかし、生える時に顎に十分なスペースが残っていないと、まっすぐ生えることができません。
行き場を失った親知らずは、手前の歯に向かって傾く、または横倒しの状態になります。
このような要因により、親知らずが横向きに生えることがあります。
現代人に横向きの親知らずが増えている理由
横向きの親知らずが多く見られる背景には、現代の食生活に変化があるといわれています。
やわらかい食べ物が中心となり、硬いものを噛む機会が減った結果、顎の骨が十分に発達しにくくなったと考えられています。
一方で、歯そのものの大きさは大きく変わっていません。
顎は小さく、歯は従来どおりの大きさというアンバランスが、スペース不足を招く一因と考えられています。
横向き・斜め・水平埋伏など生え方の種類
親知らずの生え方は、ほぼ真横に倒れているもの、歯茎や骨の中に完全に埋まっているものなど、その状態はさまざまです。
とくに、真横に倒れて骨の中に埋まった状態は「水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)」と呼ばれます。
生え方によって抜歯の難易度や対応が変わるため、まずは歯科医院で診断してもらいましょう。
横向きの親知らずを放置した場合に起こり得る5つのリスク

痛みがないからといって横向きの親知らずを放置すると、口腔内にさまざまな影響が及ぶおそれがあります。
ここでは、代表的な5つのリスクを順に確認します。

歯ぐきが炎症を起こしやすくなる
横向きの親知らずは、歯茎から一部だけが顔を出していたり、歯茎との間に隙間ができていたりすることが少なくありません。
この隙間には食べかすや歯垢がたまりやすく、細菌が繁殖しやすい環境になることがあります。
その結果、歯ぐきに炎症が起こり、腫れや痛みを招くことがあるのです。
親知らずの周囲に生じる炎症は「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と呼ばれ、疲労や体調不良をきっかけに繰り返すケースもみられます。
手前の歯が虫歯になることがある
横向きの親知らずと、その手前にある奥歯(第二大臼歯)との間には、歯ブラシが届きにくい隙間が生まれます。
汚れが残りやすく清掃も難しいため、親知らず自体だけでなく、健康だったはずの手前の歯まで虫歯になることがあります。
歯と歯の間にできる虫歯は発見が遅れやすく、気づいたときには神経の近くまで進行している場合も少なくありません。
歯周病の原因になることがある
清掃が行き届かない状態が続くと、歯茎の炎症はやがて歯を支える骨にまで影響を及ぼし、歯周病となります。
横向きの親知らずの周囲は、歯周病菌が定着しやすい環境になりがちです。
進行すると手前の歯の歯周組織まで巻き込み、口臭の原因となることもあります。
歯並びや噛み合わせに影響する場合がある
横向きに傾いた親知らずは、手前の歯を奥から押し続けることがあります。
この力が長期間にわたって加わることで、歯並びや噛み合わせに影響を及ぼす可能性があります。
とくに、矯正治療で歯並びを整えた方にとっては、せっかくの治療結果に影響が及ぶおそれがあるため注意が必要です。
まれに嚢胞(のうほう)ができることがある
頻度は高くないものの、骨の中に埋まった親知らずの周囲に、袋状の病変である「嚢胞(のうほう)」が形成されることがあります。
嚢胞は自覚症状のないまま少しずつ大きくなり、周囲の骨を溶かしてしまうこともあります。
レントゲンやCTの検査で初めて見つかることも多いため、定期的な検診が大切です。
こんな症状は要注意|受診を検討すべきサイン

横向きの親知らずは、自覚しないまま進行することがあります。
次のような症状がある場合は、早めに歯科医院で相談しましょう。
奥歯のさらに奥が痛い・腫れる
もっとも奥の歯の、さらに奥に痛みや腫れを感じる場合は、親知らずや智歯周囲炎が関係している可能性があります。
口を開けにくい、飲み込むときに違和感があるといった症状を伴うときは、早急な対応が必要になることもあります。
噛むと違和感がある・食べ物が詰まりやすい
噛んだときに奥歯の周辺に違和感がある、同じ場所に食べ物が頻繁に詰まるといった症状も、横向きの親知らずで見られることがあります。
隙間に汚れがたまった状態が続いている恐れがあるため、放置せず確認しましょう。
痛みがなくても注意が必要なケースがある
横向きの親知らずは、無症状のまま虫歯や嚢胞が進行していることもあります。
現時点で痛みがなくても、レントゲンで問題が見つかる例は珍しくありません。
気になる方は、定期検診の機会に親知らずの状態を確認してもらいましょう。
横向きの親知らずは抜歯が必要?判断基準を解説

横向きの親知らずは、必ずしもすべてを抜かなければならないわけではありません。
抜歯がすすめられるケースと、経過観察で対応できるケースの違いを解説します。
抜歯がすすめられるケース
すでに痛みや腫れを繰り返している場合や、虫歯・歯周病が進行している場合は、抜歯が選択されるのが一般的です。
また、手前の歯に悪影響が及んでいるとき、嚢胞が確認されたときなども抜歯の対象となります。
トラブルの原因を取り除くことで、周囲の歯の健康を守る狙いがあります。
経過観察でよいケース
一方、まっすぐに近い向きで生えていて清掃が可能な場合や、症状がなく周囲への影響もみられない場合は、すぐに抜かず経過観察とすることもあります。
抜歯にはリスクや体への負担も伴うため、状態を見極めたうえで判断することが大切です。
将来を見据えた「予防的な抜歯」という考え方
現時点で大きな問題がなくても、将来トラブルが起こる可能性が高いと判断される場合には、症状が出る前に抜くという選択肢もあります。
妊娠を予定している方や、今後の口腔内の管理が難しいと考えられる方には、計画的な抜歯が提案されることがあります。
最終的な判断は、歯科医師と相談しながら行うことが大切です。
横向きの親知らずの抜歯の流れと抜き方

横向きの親知らずの抜歯は、まっすぐ生えた歯の抜歯とは進め方が異なります。
一般的な流れを確認しておきましょう。

①レントゲン・CTによる検査と診断
はじめにレントゲン撮影を行い、親知らずの向きや根の形、神経や血管との位置関係を確認します。
状態によっては、立体的に把握できるCT検査を併用することもあります。
事前に状態を確認することは、リスクを抑えて抜歯を行ううえで重要です。
②歯茎の切開・歯の分割
横向きの親知らずは、そのままの状態では取り出せないことがほとんどです。
そのため、必要に応じて歯茎を切開し、覆っている骨を一部削ったうえで、歯を数回に分割して取り出します。
歯を小さく分けることで、周囲への負担を抑えながら処置を進めます。
③抜歯・縫合
分割した歯を取り出した後、傷口を洗浄し、必要に応じて縫合します。
縫合した糸は、後日の通院時に抜糸します。最後に止血を確認し、術後の注意点について説明が行われます。
抜歯にかかる時間の目安
横向きの親知らずの抜歯にかかる時間は、生え方や難易度によって幅があります。
スムーズに短時間で済むケースがある一方、骨の削除や歯の分割を多く要する場合は、30分以上かかることもあります。
麻酔が効いた状態で処置するため、抜歯中の痛みは抑えられることが一般的です。
抜歯の痛み・腫れと回復までの期間

抜歯を検討するうえで、多くの方が気にされるのが痛みや腫れ、そして回復にかかる期間です。
一般的な経過の目安を説明します。
麻酔が効くため抜歯中の痛みは少ない
抜歯は局所麻酔を行ったうえで進めるため、処置中の痛みは麻酔によって抑えられることが一般的です。
麻酔が切れた後に痛みが出ることはありますが、その際は処方された鎮痛剤で対応できます。
痛み・腫れのピークと落ち着くまでの目安
痛みや腫れは、抜歯の翌日から数日後にかけてピークを迎えるのが一般的です。
横向きで切開や骨の削除を伴った場合は、まっすぐな抜歯に比べて腫れが出やすい傾向があります。
多くは1週間ほどで徐々に落ち着いていきますが、回復のペースには個人差があります。
抜歯後の痛みについては、以下の記事でくわしく解説しています。
関連記事:親知らず抜歯後の痛みはいつまで続く?日数の目安と危険な症状を解説
抜糸までの通院スケジュール
縫合を行った場合は、抜歯からおよそ1週間後に抜糸のための通院が必要です。
経過に問題がなければ、抜糸後に状態を確認し、一連の処置が一区切りとなります。
痛みや腫れが想定より強いときは、追加の通院が必要になることもあります。
横向きの親知らずの抜歯にかかる費用

横向きの親知らずの抜歯は、保険診療として行われることが一般的です。
あくまで目安ですが、おおよその費用を把握しておきましょう。
保険適用での費用相場
親知らずの抜歯は保険診療の対象で、3割負担で受けられます。
横向きの親知らずは「難抜歯」に分類されることが多く、まっすぐな歯の抜歯よりも費用は高くなる傾向があります。
抜歯そのものの費用は3割負担で数千円程度が目安ですが、治療費とは別に、鎮痛剤や抗生物質などの薬代がかかります。
検査(レントゲン・CT)にかかる費用
抜歯の前には、レントゲンやCTによる検査を行いますが、検査費用も保険適用の対象です。
CT検査は通常のレントゲンより費用が高くなりますが、神経との位置関係を正確に把握するために必要とされる場合があります。
具体的な金額は、検査内容や医療機関によって異なります。
医療費控除の対象になる場合も
親知らずの抜歯にかかった費用は、医療費控除の対象に含めることができます。
1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を行うことで、納めた税金の一部が還付される制度です。
生計を同じくする家族分も合算できるため、領収書は保管しておくとよいでしょう。
抜歯後に気をつけたいこと

横向きの親知らずの抜歯後は、傷の治りを妨げないための注意が欠かせません。
とくに「ドライソケット」を防ぐことが、快適な回復につながります。
抜歯後にやってはいけないこと
抜歯後の傷口には血の塊(血餅)ができ、これが治癒の土台となります。
血餅が剥がれると治りが遅れるため、強いうがいや、傷口を舌・指で触る行為は避けましょう。
また、血行が過度に促進されると出血や腫れが強まることがあるため、抜歯当日は飲酒や喫煙、激しい運動や長時間の入浴も控えることが望まれます。
ドライソケットとは?症状と対処法
ドライソケットとは、抜歯後の傷口に血餅が十分に形成されず、骨が露出してしまう状態を指します。
強い痛みが数日経っても続くのが特徴で、とくに下顎の親知らずで起こりやすいとされています。
気になる症状がある場合は、自己判断せず、抜歯を受けた歯科医院に相談してください。
歯科医院で状態を確認し、必要に応じた処置を受けることが大切です。
痛みや腫れが長引くときは早めに相談を
通常、痛みや腫れは時間の経過とともに和らいでいきます。
しかし、数日たっても症状が強まる、発熱を伴うといった場合は、感染などのトラブルが起きている可能性があります。
我慢せず、早めに歯科医院へ連絡することが大切です。
横向きの親知らずに関するよくある質問

最後に、横向きの親知らずについて多く寄せられる質問にお答えします。
横向きでも痛みがなければ抜かなくてよい?
痛みがない場合でも、虫歯や嚢胞が進行していることがあります。
無症状だからといって問題がないとは限らないため、一度歯科医院で状態を確認してもらうことをおすすめします。
左右・上下をまとめて抜く必要はある?
片側を抜いたからといって、反対側や上下の親知らずを必ず抜かなければならないわけではありません。
それぞれの歯の状態に応じて、抜歯が必要かどうかを個別に判断します。
抜歯後はいつから普通に食事できる?
麻酔が切れて感覚が戻れば食事は可能です。
ただし、当日は刺激の少ないやわらかいものを選びましょう。
傷口の反対側で噛むなど、患部に負担をかけない工夫をしながら、徐々に通常の食事へ戻していきます。
関連記事:親知らず抜歯後1週間の食事ガイド|日別おすすめメニューとNG食品を解説
大学病院を紹介されるのはどんなとき?
親知らずが神経や血管に近接している場合や、全身疾患があり慎重な管理を要する場合などが考えられます。
これは安全に処置を進めるための判断であり、紹介状をもとにスムーズに受診できます。
茂木院長の総評|横向きの親知らずは早めに歯科医院で相談を
横向きの親知らずは、放置すると歯茎の炎症や虫歯、歯周病、歯並びへの影響など、さまざまなトラブルにつながるおそれがあります。
一方で、状態によっては経過観察で対応できる場合もあり、抜くべきかどうかを一律に決めることはできません。
大切なのは、自己判断で放置せず、専門家に状態を確認してもらうことです。
痛みや腫れ、噛んだときの違和感など気になる症状がある方は、早めに歯科医院を受診し、対応を相談することをおすすめします。

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当院、医療法人歯科ハミールの分院も、今後共よろしくお願いいたします。
この記事を監修した医師
赤崎 公星(あかさき こうせい)
歯科ハミール 理事長・歯科医師|愛知学院大学歯学部卒|厚生労働省認定臨床研修指導医